諸説はあるけど、全国に約16万軒以上存在していると言われており、コンビニが全国で約5万軒だから、その3倍以上の数。途轍もない数字であることは、言うまでもない。日本中"どこにでもある"けど、日本にしかない、日本独自の文化。それがスナック&カラオケバーだ。
日常的に目にしているはずなのに、僕たちは思っている以上に、その実状を知らない。それどころか、一度も行ったことない、なんて人も多いのではないだろうか。それは、もしかしたらとても損をしているかもしれない。
そんな時代の中、名古屋市中区栄4丁目女子大にある、「カラオケバー♪CIEL+【シエルプラス】」は、店名には「カラオケバー」と謳いながら、古き良き昭和のスナックの雰囲気も残す、まさに新時代の風がプンプン!
元中華料理人という名物マスターへのインタビューや店舗の情報など、「カラオケバー♪CIEL+【シエルプラス】」に行く上で知っておいた方が良いことを、撮り下ろしの写真とともにご紹介。
中区女子大のカラオケバー・「キレイになれるカラオケバー♪CIEL+【シエルプラス】」。さあ、重い扉を開き、中へと入ってみよう。
Text&Edit:SHIBACO
日本有数の繫華街、女子大
栄から西に歩けば錦3丁目。東京の銀座、大阪の北新地と並び称される名古屋の歓楽街いわゆる錦三(きんさん)。
そして栄から東に歩いてすぐの栄4丁目。この界隈は昔から女子大エリアと呼ばれ、全国の飲み屋を渡り歩く経験から言うと、新宿歌舞伎町やミナミのアメリカ村、天神親不孝通り、広島流川に似た、ナイトライフの中心地という街の空気。多様な飲食店があり、ローカルな雰囲気とフレンドリーな空気が特徴的だ。
一方で、新しく建て直した中日ビルは、街のランドマークとして生まれ変わり、多くの観光客で賑わい、まるで名古屋の未来を描いているようだ。
また、洗練とおもてなしの象徴、名古屋東急ホテルも妖艶に出迎える。以前はこの地に名古屋女子大学があったため、女子大という名が残っていると言われている。モダンと伝統が融合した、そんな様子が窺えるのがここ中区は女子大である。
平日21時頃の訪問にもかかわらず、店内は賑やか。年齢層は幅広く、25歳くらいの女子2人に、上司と部下っぽいサラリーマン。また何やら意味ありげな年の差カップルまで、みなさん笑顔で楽しんでいる、といったご様子。
「いらっしゃい。おふたり様?みんな席開けてあげてー」と、笑顔で迎え入れてくれたのがマスターの加賀ちゃん。聞けば飲食歴25年以上というベテラン料理人だ。
サラリーマンと女子二人の間に落ち着くと、「ビールセットがお得ですよ(笑)」と左の女子に勧められる。よく見るとだいぶ酔ってる様子なので、「何件目ですか?」と聞けば、なんと「お昼から女子大で飲んでる~」と。筆者もお酒は好きだが、やはり年齢には敵わない。「じゃあビールセットで」とマスターに告ぐと、キリンの一番搾りの中瓶が出てくる。「こういうお店で瓶ビールって珍しいですね」と聞けば、「瓶ビールのほうがオイシイし、たくさん飲めるんだよ~」と。気さくな感じで会話が進む。
「さっきまで満席だったんですよ」と今度は右のサラリーマン。東京から出張から来て建築関係の仕事をしているという。来年が還暦だといい、経験を積んできた大人の顔だ。部下だと思ったもう一人の彼は仕事の取引相手で、「僕は歌うために生まれてきた男なんです!」と勢いよくマイクを握る。なるほど、少し怯むくらいに歌が上手すぎるのだが、聞くところによると、月に数度、ライブハウスでお客さん相手に歌を披露しているとのこと。さらに掘り下げていくと、過去にはプロを目指していた経験もあるそう。「歌はお風呂じゃなくてトイレで練習するのが1番!」と謎の名言を繰り返し叫び、周りを楽しませてくれる愉快なタイプだ。
席数はおよそ20席ほど。ただ、マスターがワンオペで回すときも多いらしく、「うちは料理も出すでしょ?ひとりだと15席でいっぱいいっぱいかな」と正直に話すのも好感が持てる。リカー、フードのサーブでせわしなく動き回っているが、どこか楽しげな様子。繁華街に点在する”有象無象”な居酒屋なんかより、よっぽど勢いも活気もある。
「お腹すかしてきてる? 何か作るよ」と言われ、今日一日何も食べていなかったことを思い出す。
ここはカラオケバーにも関わらず、豊富なフードメニューが売りのようだ。
その中から、餃子、台湾ピザ、ゆで豚、台湾カレー、炙りチャーシューを注文する。
マスターの加賀ちゃんは、他のお客さんと会話をしながらも、裏の厨房に入って手際よく料理をしてくれる。
料理はどれも手作りで非常に美味しい。
うれしそうに加賀ちゃんが笑う。
「その台湾カレー。カラオケも歌わずに、そのカレーだけ食べたくて来るお客さんもいるんだよ。ありがたいよ。」
ひっきりなしに誰かが歌っているカラオケや、水曜でも盛り上がっている店内。加賀ちゃんの接客もそうだし、料理やお酒の質とか、すべてを踏まえて、それもそのはず、と思わざるを得なかった。
頃合い良く出てくる料理に気を良くして、瓶ビール4本に角ハイボール2杯。
ちょっと飲みすぎたかな~、と赤ら顔で話していると
「名古屋の河村市長は、ハイボールのこと、ヒャーボールっていっとったがね!」と、歌うために生まれてきた東京のお兄さんが笑って盛り上げる。
居心地よく楽しく飲み進め、程よく仕上がってきた0時頃、
”宴もたけなわ”なムードが漂い始めた頃に、徐々に加賀ちゃんが持ち歌を披露してくれた。